原因2:債権の証券化

サブプライムローンってなんだかよく分からない。ローンの仕組は?何が問題なの?どういう風に私たちの生活に影響しているの?そんなサブプライムローンの色々な疑問を解決します!

原因2:債権の証券化

債権の証券化

伝統的な住宅ローンのモデルは貸し手である銀行が借り手/住宅所有者に融資を発行し、以後信用リスク(債務不履行リスク)を追い続けるというものでした。しかし、証券化の出現によってこの伝統的モデルは「分配のための発行」モデルに取って変わられました。これは本質的に銀行が住宅ローンを販売し、信用リスクを投資家に不動産担保証券を通じて分配するというものでした。証券化によって住宅ローンの発行者はもはや満期までそれらを持ち続ける必要が無くなりました。住宅ローンを投資家に売ることで、発行元である銀行は資金を回収でき、更なるローンを発行可能になり手数料収入を得ることもできます。これは住宅ローン取引を増やすことに動機を与えつつそれらの信用品質を確保することには動機を与えないというモラル・ハザードを生み出しました。証券化は1990年代半ばに加速しました。不動産担保証券の総額は1996年~2007年の間にほとんど3倍の7兆3千億ドルになりました。サブプライム住宅ローンに占める証券化分のシェアは2001年の54%から2006年には75%になりました。米国の住宅所有者、消費者および企業は、2008年を通じておおよそ25兆ドルを借り入れました。米国の銀行はこの総額のうち約8兆ドルを伝統的な住宅ローンの形で持ち続けました。株主とそのとかの伝統的な貸し手が別に約7兆ドルを提供しました。残る10兆ドルは証券化市場から来ていました。この証券化市場は2007年春から縮小を始め、2008年秋には閉鎖も同然となりました。かくして民間信用市場における資金源の1/3以上が消滅したのです。2009年2月、ベン・バーナンキは証券化市場は依然として事実上閉鎖状態にあると述べました。例外はファニーメイとフレディマックに売却可能な公定住宅ローンのみだそうです。証券化とサブプライム危機の間のもっと直接的な結びつきは、審査者、格付け機関や投資家たちがローンや証券化プールが有するリスク相関を数学的にモデル化した際に犯した根本的な誤りと関係しています。相関モデリング(あるプールの中の一つのローンを取り出してその債務不履行リスクを決定する方法は、統計的にその他のローンの債務不履行リスクと関連している)は統計学者の李祥林が開発したガウス・コピュラという技法に基づいていました。この技法は、証券化取引に伴うリスクを評価する手段として広く採用されましたが、実は相関を調べる上では余りにも単純化され過ぎた方法を採っていました。不幸なことに、この技法に潜む欠陥は市場参加者に露呈したのは、サブプライムローンで裏付けされた何千億ドルもの資産担保証券やCDOが既に格付けされ売り捌かれた後でした。投資家たちがサブプライム担保証券を買うのをやめた時には危機の影響は既に顕在化し始めていました。ノーベル経済学賞受賞者のマイケル・スペンスは「金融革新はリスクの分散と削減を意図していたが、実際には主に視界から隠しただけだった。前に進むための重要な挑戦の一つは、金融の不安定性に関する早期警戒システムを分析面で支える基礎として、これらの力学への理解を深めることである。」と書いています。

高リスクな住宅ローン

危機に先立つ何年かにかけて、貸し手の振る舞いは劇的に変化しました。貸し手は高リスクな借り手に対してどんどん融資を申し出ましたが、その中には米国への不法移民され含まれていました。1994年におけるサブプライム住宅ローン総額は350億ドルだったのですが、1996年には9%、1999年には1600億ドル(13%)、そして2006年には6000億ドル(20%)に上昇しました。連邦準備制度のある調査によれば、サブプライム住宅ローンとプライム住宅ローンの平均的な金利差は2001年~2007年の間に顕著に縮まったそうです。このリスク割増の低減と融資条件の緩和が同時に起きるという現象は、信用循環におけるバブル形成とその破裂にも共通します。高リスクな借り手が増大した件について細くすれば、貸し手もまた益々リスキーな融資オプションや拡販施策を打ち出してきていました。2005年において、住宅を初めて購入する場合の頭金の中間値は2%でしたが、このような購入者の43%は頭金を一切払っていませんでした。対照的に中国では、20%超の頭金が要求されており、非プライム層向けではこの額はさらに上昇します。

SIVAローンとNIVAローンの出現

米国における住宅ローンの適確審査条件は変化し始めました。まず、申告所得・確認資産(SIVA)ローンが現れます。これはつまり所得があるとこの証明をしなくても融資を受ける事が出来るというものでした。借り手は単に所得があると「申告」し銀行預金があることを示せばよかったのです。次に、無所得・確認資産(NIVA)ローンが現れます。貸し手はもはや働いていることの証明を求めなくなりました。借り手は単に銀行口座に預金があることの証拠さえ示せば良いのです。ローンと証券の拡販のため審査条件は緩くなり続け、遂にはNINAローンが現れます。NINAは無所得・無資産の略です。基本的にNINAローンは正規のローン商品であり、所有資産の証明どころか申告さえ不要で融資してくれます。融資を受けるのに要るのは唯一クレジットスコアだけでした。また、もう一つの例として「利息のみを支払う」変動金利型住宅ローンがあります。この商品では、住宅購入者は初期期間は利息のみを支払い、元金は返さなくていいのです。また「支払いオプション」ローンというものもあり、この商品では住宅購入者は払える額だけを払えば良く、その代わり払われなかった分の利息は元金に組み込まれます。2004年~2006年の間に新規に融資された変動金利型住宅ローンのうち、推定1/3は初期金利が4%未満であり、一定期間経過後に著しく上昇するようになっていました。中にはそれによって月々の返済額が倍増するものもありました。従来的な好条件の住宅ローンでも審査を通るに十分なクレジットスコアを持っているにもかかわらず、変動金利型サブプライム住宅ローンを受ける事になった人々の比率は。2000年の41%から2006年には61%に上昇しました。とはいえ、融資に関わる要因はクレジットスコア以外にも多数あります。加えて、一部の住宅ローンブローカーは公定住宅ローンを受けられるような借り手でも敢えて変動金利型サブプライム住宅ローンに誘導するよう貸し手から奨励金を受けていたのです。

融資基準の緩和

住宅ローンの審査条件はブーム期間を通じて急勾配で緩くなりました。自動審査が導入され、適切な吟味や文書作成を省略してローンが認められるようになりました。2007年にはサブプライムローン全体の40%は自動審査で成約しています。米抵当銀行協会議長のジョン・ロビンスは、融資ブローカーは住宅ローンの件数をこなして手数料で儲けることばかり考えて、借り手の弁済能力を十分検査しなかったと批判しました。貸し手と借り手双方による住宅ローン詐欺は途方も無く増えました。2004年、FBIは非プライム住宅ローン業務における重大な信用リスクとして住宅ローン詐欺が「大発生」していると警告を発し、このままでは「S&L危機に匹敵する規模の問題」になりかねないと述べました。では、これほどまでに融資基準が緩くなったのは何故なのでしょうか。ピーボディ賞を受賞したあるラジオ番組の中で、NPRの記者は、2000年代初頭に「巨大な資金プール」が米国債よりも高い利回りを求めていたと論じています。更に、この資金プールの大きさは、2000年~2007年にかけて2倍に膨れ上がったのですが、比較的安全で利益の出る投資先の供給はこれに追いつけませんでいた。この需要に対して、ウォール街の投資銀行は不動産担保証券や債務担保証券のような金融革新を以て応え、これらには信用格付け機関によって「安全」の格付けが与えられました。結果として、ウォール街はこの資金プールを米国の住宅ローン市場に繋ぐこととなり、住宅ローンのサプライ・チェーンに関る各種企業に莫大な手数料収入をもたらしたのです。このチェーンはローンを販売する住宅ローンブローカーに始まり、ブローカーに資金を供給する小規模銀行を通り、その背後に存在する巨大な投資銀行郡に至ります。概ね、2003年頃には伝統的な融資基準に則して融資される住宅ローンの供給は枯渇してしまいました。反面、MBSとCDOの対する持続的な強い需要によって融資基準が押し下げられ始め、サプライ・チェーンを通じて住宅ローンが売れ続ける限りこの傾向は続きました。最終的に、この投機バブルは持続不可能であることが露呈してしまいました。NPRはこれについて次のように描写しています。

NPRの見解
問題は、住宅価格が天井知らずだったにもかかわらず、人々の収入は頭打ちになっていたことだ。2000年~2007年にかけて、世帯収入の中間値は真っ平らに寝ていた。従って価格が上がれば上がるほど、この話全体が薄膜を引き伸ばすように限界に近づいた。融資基準がどんなに緩くなっても、どんなにエキゾチックな住宅ローン商品が現れて人々を本来とても購えないような住宅に押し込もうとしても、住宅ローンマシンが何をどう試そうとも、人々はもはや単にそうにも出来なかった。2006年後半には、平均的な住宅価格は平均的な世帯収入の4倍近くに達していた。歴史的にはこれは2倍から3倍の間だった。そして住宅ローンの貸し手は、それまで殆ど決して見たことが無かったあることに気付いた。人々は家に近寄って来て、住宅ローン契約の書類全部にサインし、そして最初の支払いでいきなり債務不履行になるのだ。失業した訳でも健康状態が急変した訳でもなく、始めもしない前の最初からその気だったのだ。そして誰も実際に音を聞けたわけではなかったが、恐らくこの時に、アメリカ史上最大の投機バブルの一つは弾けた。