原因1:住宅ブーム

サブプライムローンってなんだかよく分からない。ローンの仕組は?何が問題なの?どういう風に私たちの生活に影響しているの?そんなサブプライムローンの色々な疑問を解決します!

原因1:住宅ブーム

サブプライム住宅ローン危機の原因

危機の原因は住宅市場と金融市場の両方に浸透していた様々な要因に起因すると言われています。これらの要因は長い年月の間に形成されてきたものです。原因として挙げられている中には次のようなものがあります。

  • 変動金利型ローンの金利変更のため借り手が弁済不能に陥ったこと
  • 限度を超えた借り過ぎ
  • 略奪的な貸し付け
  • ブーム期間中の投機と過度の住宅建築
  • リスクの高い住宅ローン商品
  • 個人と企業の債務水準の高さ
  • 住宅ローンが債務不履行になるリスクを分散し、恐らく隠蔽した金融商品
  • 財政政策
  • 国際的貿易不均衡
  • 政府の規制、または規制の欠如

また、サブプライム危機を呼びそれを加速させた重要な要因としては、民間部門からの資金流入、銀行が住宅ローン債権市場に参入したこと、および住宅ローンの貸してによる略奪的な貸付手法の三点が挙げられます。貸付手法の点ではとりわけ変動金利型住宅ローンである「2/28ローン(初めの2年は固定金利で、続く28年間は変動金利となるもの)」があり、これは貸し手が直接またはブローカーを通じて間接的に販売したものでした。ウォール街と金融業界では、これらの原因の多くの核心にはモラル・ハザードが存在したと考えています。2008年11月15日付「金融市場と世界経済に関するサミットの声明」において、G20の指導者たちは以下の原因を挙げました。「世界経済の強い成長、資本の流れの増加、及びここ10年間の前半に長く続いた安定期、こうした期間を通じて市場参加者は十分なリスク把握を欠いたままより高い利回りを追求し、然るべきデューディリジェンス(払って然るべき正当な注意義務)を怠った。これと同時に、融資条件の緩さ、不健全なリスク管理、複雑さと不透明さを増すばかりの金融商品、そして結果として生じた過大なレバレッジが合わさってシステムに脆弱性を作り込んだ。一部先進国の政策立案者、規制当局および監督当局は、金融市場で形成されつつあるリスクを適切に把握し対処することができなかったし、金融革新に追随できず、また国内の規制措置の体系的な細分化を考慮に入れることもなかった。」

住宅市場ブームと破裂

低金利と巨大な外資の流入は危機に先立つ何年にも渡り緩い融資条件を創り出し、住宅市場ブームと借金で消費をする風潮に油を注ぎました。米国における住宅所有率は、1994年の64%から2004年には過去最高の69.2%まで上昇しました。サブプライムローンはこの住宅所有率の上昇と住宅需要全体に大きく寄与し、価格を押し上げました。1997年~2006年の間に、アメリカの典型的な住宅の価格は124%上昇しました。2001年までの20年間において、米国内の住宅価格中央値が家計収入中央値の2.9倍~3.1倍でした。この比率は2004年には4.0倍に上がり、2006年には4.6倍になりました。この住宅バブルは相当数の住宅所有者による低利融資への借り換えや住宅価格の上昇の基づいた二重抵当による消費支出に繋がりました。米国家計が負う債務の年間可処分所得に対する比率は1990年には77%だったのが、2007年末には127%にまで上昇しました。住宅価値が上昇する間、消費者の貯蓄率は減少し、借り入れと消費は共に増大しました。家計の負債は、1974年末の7050億ドル、可処分所得の60%から、2000年末には7兆4千億ドルに増大し、2008年半ばには14兆5千億ドル、可処分所得の134%に達しました。2008年において、米国の典型的な家庭は13枚のクレジットカードを所有しており、40%の家庭は借入残高があったのですが、これは1970年には6%でした。住宅価値を担保として引き出された資金による消費支出は、住宅バブルの形成につれて2001年の6,270億ドルから2005年には1兆4,280億ドルに倍増し、この間の総額では5兆ドル近くに及びました。米国における住宅ローン残高の対GDP比は1990年代の平均46%から2008年には73%まで増大し、10兆5千億ドルに達しました。

住宅バブルの崩壊

この信用と住宅価格の爆発的増大は建築ブームを呼び、遂には過剰な住宅在庫が形成されたため、米国の住宅価格は2006年半ばにピークを迎えたあと下降を始めました。融資条件の緩さと、住宅価格の上昇が続くと信じられたことにより、多数のサブプライム層変動金利型住宅ローンに手を出しました。これらの住宅ローンは予め定められた一定期間中は市場相場よりも安い金利で借り手を誘い、残りの期間中は市場金利が適用されるようになっていました。初期の低利期間が満了した後、切りあがる弁済額に耐えられない場合は、借り手は住宅ローンを借り換えようとしました。米国の多くの地域で住宅価格が下がり始めると借り換えは前より難しくなりました。切り上がった弁済額から借り換えによって逃れる道を絶たれた債務者は債務不履行に陥り始めました。住宅ローンの弁済を停止する債務者が増えるにつれて、差し押さえと住宅物件の売物が増え始めます。これは住宅価格を押し下げる圧力となり、住宅所有者の資産価値をいよいよ下げる結果となったのです。住宅ローンの弁済が減ることは不動産担保証券の価値をも下げ、これは銀行の自己資本と財務的な健全性を蝕みます。危機の中心にあるのはこの悪循環であり、これは現在も進行中の事なのです。2008年9月現在、米国の平均的な住宅価格は2006年半ばのピークから20%超下落しました。住宅価格がこのような予想外の大きな落ち込みを見ると、多数の借り手は住宅のエクイティが0又はマイナス、すなわち家の価値が住宅ローンの額を下回ることになります。2008年3月の時点で推定880万件の債務者の住宅エクイティがマイナスでしたが、これは2008年11月には1200万件まで増大したと言われています。住宅ローンは典型的には物件を抵当としたノンリコースローンなので、この状況に陥った債務者にはあえて債務不履行を選ぶインセンティブが生じます。経済学者のスタン・リボーウィッツがウォールストリート・ジャーナル紙上で述べたところでは、エクイティがマイナスである住宅は全体の12%に過ぎないにも関わらず、それらは2008年下半期に生じた差し押さえの47%を構成していました。彼の結論によれば、差し押さえの主な要因はローンの種類や借り手の信用状況、弁済能力ではなく、住宅エクイティの大きさでした。差し押さえ比率の上昇は住宅の売物在庫を増やします。2007年における新築住宅の販売件数は前年比で26.4%減少しました。2008年1月の新築住宅の売物在庫は2007年12月の成約数の9.8倍であり、この比率は1981年以来最大でした。これに加えて400万戸近い中古住宅が売りに出されており、うちほぼ290万戸は空き家でした。この過剰な在庫が住宅価格を下げ、価格が下がるにつれて、更に多くの住宅所有者が債務不履行や差し押さえのリスクに陥ったのです。住宅価格の下落はこの過剰在庫が通常のレベルに下がるまで続くと考えられています。

住宅所有者による投機

サブプライム住宅ローン危機の根本原因の一つとして、居住用不動産に関わる投機的な借入が挙げられます。2006年において、住宅購入のうち22%は投資目的であり、加えて14%は別荘として購入されました。2005年におけるこれらの数字はそれぞれ28%と12%でした。つまり住宅購入のほぼ40%という記録的な割合が居住を主目的としていませんでした。全米不動産業者協会主席経済学者のDavid Lereahによれば、2006年における投資用購入の減退は予期されていたといいます。「投機目的の買手が2006年に市場から去ったため、投資用物件の売れ行きは居住用物件の市場よちも遥かに早く落ち込んだ」と語っています。2000年~2006年の間に米国の住宅価格はほぼ倍増しましたが、歴史的には住宅価格は概ねインフレ率に連動してきたので、これは大変特異なトレンドでした。米国では伝統的に住宅は投機対象になってこなかったのですが、住宅ブームの中で動きが変わりました。コンドミニアムを建築段階で購入し、完成した途端一度も入居しないまま利益目的で転売するという話をメディアは多数報告しました。一部の住宅ローン業者は、顧客の中に高いレバレッジを用いて複数の物件に投資する向きがあることに気付き、こうした行動に潜むリスクに2005年時点で気付いていたそうです。マンハッタン政策研究所のニコル・ジェライナスは、住宅投資の内実が保守的なインフレ・ヘッジから投機へと変質してきたにもかかわらず、税法と住宅ローン政策が適切に見直されてこなかったために生じた負の結果について描写しました。経済学者のロバート・シラーによれば、投機バブルに油を注いだのは「上昇相場にありがちな、事実を度外視するかのような伝染性の楽観主義である。バブルは元来が社会現象である。それらを加熱する心理を理解し解決しない限り、膨れ上がり続ける」。ケインズ学派の経済学者ハイマン・ミンスキーは、投機的な借入がいかに債務の上昇と最終的な資産価値の崩壊につながったかを描写しました。ニューヨーク州検察局は、信用格付け機関を欺いてサブプライム関連投資の格付けを嵩上げした容疑で8行の銀行を調査しています。米国証券取引員会、アメリカ合衆国司法省、及び連邦検察局その他は、史上最悪の投資商品の一つとなった住宅ローン証券を銀行がどのように創り出し、格付けし、販売・交換したかを調査しています。2010年現在、刑事民事を含め殆ど全ての捜査は未だ緒に就いたばかりです。ウォーレン・バフェットは金融危機調査委員会に対して「あれは私が生涯見てきた中で最大のバブルだった。・・・アメリカ市民全体が、住宅価格が劇的に下がることはあり得ないという信仰に囚われていた」と証言しています。